妊婦加算は、医療機関や保険者らで構成される中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)の議論を経て、昨年4月から導入されました。「妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価する」、つまり、胎児や母体にとって安全な薬や検査方法を選ぶなど丁寧な診療への評価という趣旨で、妊婦健診と歯科を除く全ての診察が対象となっています。これ事体は妊婦を保護するための政策として納得できるものですが、費用負担が妊婦の支払いになることが問題となっていました。「充分な説明がない」「少子化対策と矛盾している」など批判が続出しました。これを受け、自民党の厚生労働部会では、年末までに対策を講じるように厚生労働省に注文を付けました。(12月13日時点)翌日の厚労大臣の会見では、妊婦加算の一時凍結を打ち出しました。与党からの猛反発を受けて1日で方針転換。4月の導入から約9ヶ月間で、制度自体の廃止についても検討を始めた状況です。
しかし、医療機関にとって、この加算凍結は、診療報酬の減となるわけです。もともと産科医の不足に端を発し、他の診療科でも妊婦へ積極的に関わってもらおうとするものでした。そのような背景を考えると性急な凍結という結論も、今までの議論、制度設計は何だったのかと・・・
この問題で感じましたのは、何事も制度化する前の作業がどこまで煮詰まったものなのかということです。現場、利用者、消費者、最前線の事情をどこまで理解して決めているのか、ということです。今回の消費税にしてもしかり、何ゆえに上げるのかがぼやけている、私たち市民には理解できない中で、進んでいる気がします。妊婦加算の凍結、その後の展開が、選挙の材料にならないことを願うものです。